2007-07-14

メタファーが言うこと

メタファーが字義的意味とともにもうひとつのメタフォリカルな意味をもつという見解は、デヴィッドソンによると誤りだそうだ。
冨田恭彦「アメリカ言語哲学入門」に紹介されたデヴィッドソンの主張は、メタファーを通常のコミュニケーションの一形態とさえ見ることを拒否している。
デヴィッドソンによれば、メタファーはその字義的意味以上のことは何も言わない。言葉が意味するものと言葉の使用によってなされるものの区別がよりどころとなる。メタファーはもっぱら使用の領域で言葉や文の想像力豊かな使用によって成就され、それらの言葉の通常の意味に完全に依存しているというのだ。
これは、いわば常識を逆転した刺激的な発想だ。これを理解する人間の不思議さが際立ってくるからなおさらだ。